ク チ ビ ル

2002.5.24 ・◆・由貴 




気付いていたさ。ずっと見つめられてるってな。

あんなに熱い視線を投げかけられていては気付かない方がどうかしてる。

マントを外した時は本当に何の気なしだった。無造作にそれをソファに投げおき、手甲を外した時、ふと気付いた、君の視線に。

一体俺の何を見ているのか、その瞬間はよくわからなかった。それは本当だ。

でも、すぐに気付いた。君の熱っぽい瞳に。俺の一挙手一投足を追うようなその動きに。知らず知らずのうちに微かに零しているやるせないような嘆息に。

俺の単なる着替えの何がそんなに君の心を捉えたんだ?だが、そんな風にみつめられるのは、悪くない。いや、むしろ背中がぞくぞくするような心地良い戦慄。胸がいやにざわめくのに、浮き立つような高揚。

だから、君の視線に気付いても、俺は何も言わなかった。

今、それを指摘したら、君はきっと裾を翻して逃げ出しちまう、臆病な子鹿のように。そんな気がした。俺の何かに捕われたといっても、まだ抜き差しならないところまで深くは捕われていない。するりと容易にすりぬけてしまうレベル。それは俺の直感だ。

しかし、君が自分から俺に捕らわれてくれたというのなら…知らず知らずのうちに俺の懐に飛びこもうとしてるなら、それをみすみす逃すような真似を俺がすると思うか?まだ踏みこみが浅いなら、もっともっと深く強く、君がもう逃げられないと自分から思うほどの深みまで俺は誘いこむだけだ。

俺は少しだけ動作を緩慢にする。さも寛いでいるように。君を油断させるかのように。だが、同時に背後に隠しもつ緊張感。君の潤んだ瞳をもっと惹きつけておけるように、君が俺以外のものに気を逸らすことのないように。

スラックスを僅かに緩めてみる。君の頬にすっと朱が刺した。これは刺激が強いか?なら、君が目を逸らさないで済む程度に緩めるだけに留めよう。君は頬を染めながらも目を逸らしてはいないな?

それを確認してから、俺はアンダーに手をかけた。腕を交差させ、故意にゆっくりと引きあげる裾。俺の肌の露出が増えていくほどに、君の頬が比例するように染まっていく。なのに、君の瞳はどこか夢見る少女のようだ。無垢で真剣で一途で、それでいて熱っぽい。俺の胸が半ばまで露になった時、何か言いたそうに君の唇がうっすらと開いた。濡れた半開きの唇が俺の雄を恐ろしく刺激する。可憐この上ないのに妖艶なその風情。その危うい均衡が俺の雄をひどくそそってやまない。

俺はそんな君の様子を見て軽く口の端を上げた。もちろん、君が見ていることは承知の上で。

君をこの腕に閉じ込める王手をかけるためにな。

でも、そのためだけに笑んだ訳じゃない。

君の真摯な眼差しが嬉しくて、でも、君は自分の妖艶さには全く無自覚なのだろうと思って思わず微笑みたくなった。俺の方が誘ってるつもりだったのに、いつのまにか誘われてるような気になっちまってた自分が可笑しくもあった。それに…俺のことを見つめていたな?なんて俺に指摘されたら、君はどんな反応をするんだろうな…なんて考えたら楽しくなっちまったっていうのもある。だから、俺の笑みは決して偽りの笑みじゃないぜ。俺は君には作り笑いなんて絶対にしない。しようったってできないがな。

君は俺の笑みを見てはっと慌てたように瞳を伏せた。頬はぽおっと灯りがついたみたいだ。

俺は君がうわの空だったことを指摘する。君は困ったように黙ったままだ。そこに俺は間髪をいれずにずばりと切り込んだ。さては、俺に見惚れていたな?…ってな。

こういう時は考える間なんかないほうがいいんだ。わかっているぜ?ってこっちから示してやったほうが、君も自分の気持ちを素直に出しやすいだろう?

だが、君はきゅっと縮こまった様に黙りこんでしまう。

沈黙はこう言う場合、どんな言葉より雄弁なんだぜ?その様がまたかわいらしくて仕方ない。俺に見惚れてたって、語るにおちてる。それをあからさまに態度に示してしまうところもな?

だが、あまりに恥かしがっている様子がなんだかかわいそうな気もしてしまう。でも、それほど夢中になって俺を見つめてくれていたんだろう?そう思うと俺はぞくぞくしちまう。尤も今はそんな気持ちはおくびにも出さず、さも何でもない風に、恥かしがる必要なんてないさと俺は言ってやる。

そう、俺を見つめていたからと言って恥かしがる必要なんてない。だって俺はそれが嬉しくてたまらないのだから。でも、君はもっと居たたまれない風情になってしまって顔をあげようとしない。率直になるにはもう一押しといったところか。

俺はもう意識する必要もなくなったので、無造作にさっさとアンダーを脱ぎ捨て、君の側にそっと近づいた。

そして、かがみこんで君の耳元で囁いた。君が俺に見惚れてくれていたのなら、嬉しいんだがな、と。

君が俺に見惚れていたのはわかっているさ。だが、俺は君に自分からその事を認めてもらいたいんだ。

君がぴくんと震えた所をすかさず、顎を捉えて顔を上げさせた。君はびっくりしたように俺を見つめる。様様な想いが溢れそうな潤んだ瞳、何か語りたそうな濡れた唇。今すぐ口付けたい衝動が一瞬狂気のように沸き起こる。

それを無理矢理ねじ押さえ、俺はまず自分の想いを語る。俺の言葉は欠片も偽りのない、全て本心だ。今もそうだが…俺は一度君をみつめてしまうとどうやっても自分からは視線を逸らせない。君の豊かで生き生きとした表情、愛らしい肢体、可憐な仕草、甘い香り、何もかもが俺を捉えて離してくれない。無理矢理意識をもぎ取るようにでもしなければ、視線を逸らせないんだ。それが苦しいから、執務中は君をなるべく見つめない様にしているのに、でも、いつもそれは無駄な努力で終わってしまう。それは全て真実なんだ。

俺は表面だけの口説でこんな事を言っているんじゃない。君もそれはわかってくれているんだろう?だって君の睫があえかに震える。無理矢理堰きとめられている想いが今にも溢れ出しそうだって、その瞳が訴えている。いいんだ。想ったままを現してくれて。君の想いが知りたい。君の言葉で語ってほしい。それこそが俺の望みでもあるのだから。

だから俺は言った。もし、君が俺と同じような想いを抱いて、俺を見つめてくれていたのなら嬉しいんだがな…と。きっとそうだと思う、そう思いたい、でも、はっきりと君の口からそう言ってもらいたいんだ、俺は。

君は今まで以上に熱っぽい瞳で俺を見つめる。俺を誘う様にゆっくりと唇を開く。そして、俺の切なる願いをかなえてくれた。これ以上はない率直さで。これ以上はない熱さで。

俺の魂はその時、歓喜に震えた。この世のものとも思えぬほどの純粋な喜び。そして同時に沸き立つ狂おしいほどの欲望。その抑え難さは自分でも空恐ろしいほどだ。

だって、これほど真剣でこれほど情熱的な求愛に燃えない男がいるだろうか。その瞳が、その唇が俺に切切と訴えている。あらん限りの熱情で、俺を欲しいと。俺を欲してやまぬと。

俺は誘いをかけたつもりだった。なのに、いつのまにか俺の方が誘われている。こんなに悩ましい瞳で見つめられて。こんなに濡れた声でそそられて。

そして、俺は想像する。きっと俺も今、こんな瞳で君をみている。君を欲する気持ちをどうにも抑え難く瞳に燃え上がらせていることだろう。でも、君はそれに怯んでいない。まっすぐに見つめ返してくる。君の瞳に燃える焔を俺が歓喜をもって迎えているように、俺の瞳に燃え立つ焔に君は敢えて焼き尽くされてたがっている…そう思えるのは俺の自惚れだろうか。互いの瞳に燃えている焔は互いの瞳に映り合い、互いの熱を更に煽っていると思えるのは気のせいではないだろう?

だから、俺は念を押すだけだ、互いを求める気持ちの熱さを今すぐ確かめ合おうと。今なら誰に何の遠慮もいらず確かめあえるからと。君に許諾は求めない。こんな熱さをそのままにしておいたら、俺はやるせなさに頭がおかしくなっちまう。それはきっと君も同じ筈だと俺は思うから。

ああ、どうか、この瞳も、この声も全て俺だけに注いでくれ。俺だけに注がれるものであってくれ。俺が君から目を逸らせないように、君も俺から目を逸らさないでくれ。俺が君を自分の瞳に閉じこめてしまいたいと言ったのは、比喩じゃない、まったく紛うことない俺の本心だ。

その心の望むままに俺は君を抱き寄せた。せめて俺の腕の中に閉じこめたくて。君をしっかりと抱きとめると、安堵する気持ちと駆け出したいように急く気持ちとが胸中でせめぎあう。君に漸く口付ける。ずっとずっと塞ぎたかった、触れたかったこの唇。すかさず舌をねじ込む。絡めとる。きつく吸う。味わい尽くしてしまいたいと思うほどに口腔を貪る。狂暴なほどの舌の動きに、しかし君は怯まない。むしろ、もっととせがむ様に自分から舌を絡めてきてくれる。俺の中心は更に熱くなる。

君の身体はなよやかに俺に寄り添っている。自然にしなやかに俺の無骨な身体にその身を沿わせ、俺の胸にその柔らかさを預けてくれている。

俺はたまらず君をきつく抱きしめた。もう、止まる気もなかったし、そんなことは最初から不可能だった。そう、君の視線に気付いた時から。

 

オスカー様が私を包む様に抱きしめてる。オスカー様の胸、とても暖かくて気持ちいい。

美丈夫って言葉が相応しいお顔が間近に近づいてくる。ずっと見ていたいような気もするけど、でも、やっぱり恥かしくて私は瞳を閉じてしまった。直後に柔らかく塞がれた唇。鋭く入りこんでくる熱い舌。

今日のオスカー様のキスはちょっと強引で荒々しい感じ。でも、乱暴じゃない。力強いけど…優しさを感じさせるキス。オスカー様はいつもどこか優しいの。大胆な時も激しい時も、必ずどこかに優しさが潜んでいる愛撫をしてくださるの。今もそう。丁寧に舌で舌をなぞるように絡めてくる。丹念に吸う。ついばむ様に唇を食んでくれる。

とても大事に大切にキスしてくれてるってわかるの。キスしてもらうほどに、もっとキスしてもらいたくなるの。キスしてるだけで、身体がどんどん熱くなるような気がするの。だから私はオスカー様とキスするのが大好き。

オスカー様もそう思ってくださるといいな、そんな風に考えて、私は自分からもオスカー様の舌に自分の舌を絡めてみる。もちろん、私のキスはそんなに上手くないと思う。でも、私、オスカー様とキスするのが好きだから、オスカー様にキスしてもらうのが好きだから、その気持ちだけでも伝わります様にって思って自分からもキスするの。だって、黙って受けてるだけじゃ、きっと、私がキスしてもらって嬉しいって気持ちは伝わらないと思うから。

そしたら、いきなり腕の力が強くなって、私の身体、もっとオスカー様の身体に押し付けられるようになった。私、ちょっとびっくりしちゃって、思わず目をあけちゃったの。

オスカー様は私よりとっても大きい方だから、抱きしめてもらうと私は全身を包みこまれたみたいな気がしてとっても安心できるの。私の周りの世界はオスカー様だけになってしまうような錯覚に捕われることがあるの。今も私の眼の前に広がるのは、肉厚で逞しくて頼もしくて…でも、とっても肌の滑らかな綺麗な褐色の胸板。視界の端にさっき私をどきまぎさせた濃褐色の先端がまた、ちらりと見えて私、もっとどきどきしちゃった。だって、すぐ側に見えたから。男の人の胸にどきどきしちゃうなんて、私、変かな。でも、本当にどきどきしちゃうんだもの…オスカー様の身体ってほんとにきれいなんだもの…

でも、固く抱きしめられながらのキスだと、私の首はかなり上向けになるので、長い時間だと少し苦しい。それで、私、少しだけ顔を傾げてみたの。オスカー様ははっとしたように一度唇を離されたわ。そして、いとおしそうに私の頬にご自分の頬をすりよせてくださったの。少しくすぐったいけど、でも、なんだかとても幸せな気分。

「お嬢ちゃん、こっちにおいで」

オスカー様は私が何も言わないうちから、私のことをひょいともちあげるように抱き上げると。そのままソファに座って、私をご自分の膝の上に乗せたの。

あ…私がキスの時少し苦しくなったのがわかってくださったのかな。だってこうして膝の上に乗せていただけると、私とオスカー様の目線はほとんど差がなくなるの。重くないかなって申し訳なくも思うのだけど、こうしてオスカー様のお顔がもっと近くで見られるのが嬉しいの。いつもは見上げるばかりだから、オスカー様のお顔を側で同じくらいの高さで見られるのが嬉しいの。

私はオスカー様の首に腕を回す。ほんとはこのままきゅっと抱き付いちゃいたい。オスカー様の裸の胸にすりすり顔をすりつけちゃいたい。でも、そんなことしたら呆れられちゃうかな。それに抱き付いちゃったら、オスカー様の顔がよく見えなくなっちゃうし…オスカー様の顔も見ていたいんだもの。どうしよう…

オスカー様がその時、また、私のことを見てふっと微笑まれたの。

「どうした?お嬢ちゃん、何か俺にいいたそうだな?」

私の考えてたこと、見透かされてる?

「あの…あの…あの…」

どうしよう、自分でもどうしたらいいかわからないんだもの、こんなこと言ってしまっていいの?でも、オスカー様はさっき私が思ってた事を口にした時すごく嬉しそうだった、私、正直に言ってしまっていいのかな?

「……私、オスカー様にだ、だ、抱き付いちゃいたい…って今、思って…でも、オスカー様の事を見ていたいとも思って…自分でもどうしていいかわからなくて…」

きゃー!言っちゃった!いやー!恥かしい!やっぱり言わなければよかった!って思って私、ぎゅっと目を閉じた。

でも、直後に感じた暖かい唇。閉じた瞼に、額に、鼻先に、両頬に、そして最後に唇に。目まぐるしい感情の嵐が暖かい唇でほぐされる。私、恐る恐る目をあけてみた。

オスカー様は蕩けそうに優しい笑みを浮かべてた。私、胸がきゅうっと絞られたみたいに苦しくなる。そのまま、また固く抱き寄せられて髪を撫でられた。

「かわいいな、お嬢ちゃんは、本当にかわいい…思ったことを素直に言ってくれて俺は嬉しい…俺も同じ気持ちだから…君も同じ想いだってわかって嬉しい…俺も君を見ていたい、でも俺は見ている内に君に触れたくなる…今は触れたくてたまらない…触れたい気持ちの方が強い…」

「オスカーさま…」

「迷った時は順にしたいことをすればいいさ。今は俺を見ていたいならそのまま見ているといい。俺が君に触れるところを…そして、見ているうちに君も俺に触れたくなる、触れたくてたまらなくなる、きっとな…」

「あ…」

私、身動きがとれなくなる。射すくめるような瞳の力に、予言のような言葉の魔力に。縛られたように動けなくなる。オスカー様の手が背中のファスナーを降ろしている。背筋を辿るような指先の動きが私をぞくぞくさせる。身動きできないと思ったのに、自然に身体をよじって腕を抜きやすくしている私…私、待ってるんだわ、オスカー様に触れてもらうことを待ってる…

その時、オスカー様が私の耳の上辺をはむ…と食んだ。

「あっ…」

順番に耳全体を唇で鋏まれた。耳朶を舐め上げられ、耳の後ろの窪みを舌先でくすぐられ、そのまま唇はうなじから首筋に降りていく。

「あ…はぁ…」

オスカー様の舌が首筋をいったりきたりしてる…髪をかきあげてうなじを吸っている…や…これだけでもう声が出ちゃう…だからいっつも言われちゃうの、辛抱の足りないお嬢ちゃんだって…でも、でも、我慢できないの…オスカー様の唇が、舌が、肌に触れると、胸が苦しくて、でも、それは気持ちのいい苦しさで、苦しいのに止めないでほしくて…

「お嬢ちゃん…俺がお嬢ちゃんのかわいいと思うところ、俺の好きなところを俺の唇で教えてやろう…」

「え…?」

「この貝殻のような耳朶…白いうなじ…すんなりとした首筋…」

「あ…」

オスカー様は口に出された順に耳から首へと、ちゅっちゅっと幾度もキスしては小刻みに吸い上げる。あん…唇で教えるって…こういうこと?

「このまろやかな肩のライン…しなやかな腕…」

オスカー様は唇でブラジャーの紐を咥えてそのまま口で紐を肩から外していく。唇は肩から腕にずっと撫でるように触れたまま…ホックは気付かないうちにもう外されてた…あ…やん、そのまま唇で肌をなぞられるように肩紐をとられてブラジャーを外されちゃった…すごく恥かしい…

胸、隠したい…そう思ったのに私の腕、動かない、オスカー様に優しくとられたまま…だって、私、本当は待っているのだもの。オスカー様の唇に触れてもらえるのを待っているのだもの…私の身体で好きな所をキスで教えてくれるって言われて…恥ずかしいけど、それが震えるほどに嬉しい。オスカー様は私の胸、好きっていってくださるかしら?

でも、オスカー様の唇は、私の腕を滑っていった…捉えられていた腕を口元にもっていかれて、指を口に含まれてちゅっと吸われた。舌で指を舐られてぞくっとした。私がたまにオスカー様の物を含んでいるときオスカー様はこんな風に感じるの?でも、きっと指よりもっと…なんて一瞬考えてしまってひとりでに赤らむ頬。そのまま指の股を舐められてやっぱりあらぬことを想像してしまった私…恥かしくてオスカー様には絶対言えないけど…それから手首や肘の内側にも唾液の跡がついていく…少しくすぐったい…

これも気持ちいいけど…私の手や腕を好きって示してくださるのも嬉しいけど…私の胸は?胸には触れてくださらないの?って、少し不安になってしまった私…だって、さっきから露になったままで恥かしい…露にされてるだけだから…居たたまれない…

いつもやさしく触れて、唇を寄せてくださるけど…それは私が喜ぶから?ほんとはオスカー様はそんなに私の胸は好きじゃないのかな…小さくはないと思うけど、そんなに大きいって訳でもないし…なんて一瞬思って哀しくなってしまったの。

気持ちのままに少し俯き加減になってしまった顔。

でも、その途端に頬を包まれる様に、私、顔を上げさせられた。

「お嬢ちゃん、俺がお嬢ちゃんをどれほどかわいく思っているか見てなくちゃだめだろ?ん?どうした?お嬢ちゃん、なんだか、少し…寂しそうだな」

「オスカーさま…」

オスカー様には隠せない、私の気持ち…そう思ったから言ってしまったの?ううん、本当は、私、自分でも子供みたいだって思ったけど、つい、甘えてしまったんだと思う。本当は、オスカー様の答えを予測できたのに…甘えたんだわ…

「あの…あの…胸にはキスしてもらえないのかな…って思っちゃったの…私の胸、あんまり大きい方じゃないから…だから……」

途端に鼻先をかぷっと噛まれた。

「きゃ!」

「お仕置きだ、お嬢ちゃん。そんなことを考えるなんて…」

「だって…」

「俺はお嬢ちゃんのかわいいおっぱいに夢中なんだぜ?あんまりかわいくて、あんまり愛しくて仕方ないから一度おっぱいにキスしたら当分そこから離れられなくなっちまう。だから他の場所からキスしてた。俺はお嬢ちゃんの体全てが好きでかわいくて仕方ないから…どこも省くなんてできないからな。」

「オスカーさま…じゃ、じゃ、私の胸、好き?」

オスカー様はいきなり私の胸の谷間に顔を埋めて、ぐりぐりっと左右に振る様に顔を押しつけてきたの。

「や…やぁん…くすぐったい……」

「馬鹿だな、お嬢ちゃん。俺はお嬢ちゃんのおっぱいが好きで好きで頭が変になりそうなくらいだぜ、ほら…」

オスカー様は私の乳房全体に降る様にキスを落し始めた。撫でるように唇を滑らせ始めた。

「あ…あん…」

「でもお嬢ちゃんにそんな不安を一瞬でも感じさせちまった俺はもっと大馬鹿野郎だ……お嬢ちゃんがそんな事を考える暇もないほど、おっぱいをかわいがってやるからな、もう…止まらないぜ?」

「え…あんっ…」

きゅっと絞る様に乳房を掴まれた。円を描く様に大きく揉みしだかれた。オスカー様の掌に先端が擦れて…やん…変な感じ…

「こんなかわいいおっぱいを見たら…触れたら、俺の手も唇ももう離れられない…ほら、あつらえたみたいに俺の手にぴったりだろう?…つんと挑発的で、ほんわりと優しくて、雪よりも白くて、甘い香りがして…どんな果実より瑞々しくて…」

…恥かしいけど、でも、すごく嬉しいことをおっしゃってくださるオスカー様。言いながらオスカー様は、私の乳房のあらゆるところに舌を這わせてる。

「そして、俺に食べられたがって熟れきって…俺を誘っている…違うか?」

「あ…」

「特にここだ…」

オスカー様は指先できゅっと私の乳首をつまんで指先でくりくり捻った。

「あっ…」

「ああ、かわいいな、お嬢ちゃんのこの蕾、ほんとにかわいい…こんなに綺麗に色づき熟して…つんと尖って俺を挑発してる…」

オスカー様は私の乳房全体をなめまわしながら、両方の乳首を摘んで、その上先端の感じやすいところを人差し指の腹で触れるか触れないかって加減で撫でさすったの。

「あぁんっ…」

「食べてもらいたいか?お嬢ちゃん…お嬢ちゃんのここは、俺に食べてくれって言ってるみたいだぜ?口に含んで、舐めて、吸ってくれってな…」

「あ…あんっ…おすか…さま…」

「でも、ここを食べちまったら…しばらく他にかかずらう余裕はなくなっちまう、許してくれよ?お嬢ちゃん…他の場所は少し待たせてしまうが…もう、はやとちりはなしだぜ?」

オスカー様はこう言うとやにわに私の乳首をぺろりと美味しそうに舐めて…そのまま、見せつけるようにゆっくりと丁寧に乳首を舐めあげ始めたの。いろいろな角度から、根元から先端へ何度も何度も。

かと思ったら乳首の本当の先端だけに尖らせた舌先を左右に小刻みに蠢かしたり。

舌全体を乳首に円を描く様にねっとりと絡ませたら、すかさず上下左右に激しく舌をスウィングさせるように弾いたり。

歯の先で軽く…ほんとに軽くこそげるように乳首をなぞったり、そのまま軽く噛まれて…オスカー様は絶対に痛くないように噛むの…すごくぎりぎりの微妙な力加減が魔法みたい…噛まれて少し突き出した乳首の先で舌を回したり…

乳輪ごと口に含まれて舌で転がされながら、わざとチュクチュク音を立てて吸われたり…

こんなことを両方の乳房に順番に途切れることなくされて…

その間、もちろんオスカー様の手は私の乳房をずっとこねるように揉んでいて…

もう、もう、私、胸への愛撫だけでおかしくなりそうだった。胸にキスしてもらえないかも…なんて一瞬でも思うなんて、私ってほんとに馬鹿…オスカー様が心から私の胸を好きで好きでたまらないから、こんなに熱心に愛撫してくださるんだって、熱い舌から、唇から、ひしひしと伝わってくるの。だから、私も、声が抑えられない。

「あっ…あんっ…あんっ…やぁん…」

本当は…唇で触れられた瞬間からもう、我慢なんてできなかった。

なんで、オスカー様の唇はこんなに熱いの?やさしいのに、柔らかいのに…触れられた所は火がついたみたい。そこから身体中が熱くなる。火照ったように熱くて、やるせなくて、息苦しくて、でも、気持ちいい…ずっとずっと止めないでほしいとおもっちゃうくらいに気持ちいい…これって…もう虜になってる…

「おっぱいが気持ちいいか?お嬢ちゃん…すごく、気持ちよさそうな顔をしてるぜ?」

「や…やぁん…」

また、見透かされてる…もう、いやん…

「いやなのか?気持ちよくないなら、止めるか?」

オスカー様はにやって笑うと一度唇を離した…意地悪…すっごくオスカー様は意地悪…笑顔もさっきと全然違う、悪戯っ子みたいな笑み…でも、でも、私、すぐ降参しちゃうの…だって、止めないでほしいんだもの…こんなオスカー様も好きなんだもの…

「や…止めないで…気持ちいいの…」

「どうしてもらうのが気持ちいいんだ?お嬢ちゃん…」

「………全部」

「ん?それじゃどうしてあげたらいいのか、わからないぜ?」

「あん…もぅ……舐めてもらうのも、吸ってもらうのも…噛んでもらうのも…感じは違うけど全部気持ちいいの…だから…」

言っちゃた、言わされちゃった…私は恥かしくてたまらないのに…オスカー様ったら、すっごく嬉しそう…

「そうか、全部好きか…でも、どんなに気持ちよくても、片方ずつだと残されたおっぱいは寂しいよな?またお嬢ちゃんが、キスしてない方のおっぱいは好きじゃないのか、なんて誤解したら困るしな…」

「え?」

オスカー様は、私の胸を両脇から思いきり寄せて、2つの頂点がくっつきあうほどに寄せて、そしていきなりその2つの頂点を一時に口に含んで転がし始めたの。両の乳首を同時に舌で舐めて弾いて転がして、ちゅくちゅく吸われちゃったの。

「あああっ…」

や、なに、こんな、こんなの知らない…2つ同時に舐められてるだけなのに、一つずつじゃないってだけで、なんでこんなに、おかしな気持ちになっちゃうのー!

「あぁんっ…やっ…あぁっ…はっ…」

も、自分でも何を言ってるのか、わからない。でも、声をあげずにはいられない。短い、忙しない、意味のない声を…

「全部好きなんだろう?全部気持ちいいんだろう?だから、全部してやるからな、お嬢ちゃん…もう、寸分も寂しい思いなんてする暇がないように…な。」

オスカー様の舌が別の生物みたいに動いてる、私の乳首を二つ一緒にちろちろ弾いて転がして、微かに歯を立てられて、一杯吸われて…恥かしくて…でも、気持ちよくて、幸せで…

だって、オスカー様の気持ちが唇から伝わってくるから。私の胸にキスするのがとても好きってことだけじゃない。私が少しでも寂しくなったりしないように休む間もなく愛撫してくださってるんだってわかるから。だから、とても嬉しい、とても幸せ。

「あっ…おすか…さま…」

だから、私、オスカー様の髪に指を埋めて、もっと胸に押しつけるようにお顔を抱き寄せちゃった。私も一杯キスしてもらって嬉しいです、幸せですって言いたいいけど、言葉がうまく出ないから…

するとオスカー様は、1度唇を離して私の乳房にお顔全部を摩り付けるように頬ずりなさったわ。

「ああ、かわいいな、お嬢ちゃんは…本当にかわいい…気持ちがいいって、こんなに喜んで…だから、俺はますますお嬢ちゃんのおっぱいから離れられなくなっちまう…こんなに喜んでくれるからますますかわいがってやりたくなる…俺がいかにお嬢ちゃんのおっぱいに夢中か、これでわかっただろう?」

私、こくこく頷いた。息があがってしまって、上手く話せないし、はっきり口にするのは恥かしいもん…

オスカー様は軽く唇にキスしてくださってからこう言ったの。

「お嬢ちゃんの体中に口付けてやりたいが、一時って訳にはいかないから、少し待たせるところがあっても、もう、不安になったりしちゃだめだぜ?きっと、早くキスしてもらいたくて、うずうずしてるとは思うが…こことかな?」

そう言うとオスカー様はいきなり私の股間に手を差し入れて…ショーツの上からふっくらした部分をすぅっと撫ぜたの。

「きゃん!」

私、オスカー様の膝の上で飛び上がっちゃった。電気が走ったみたいにびりっとしたから…

「もう、すっかりびしょびしょだな。布の上からもちゅぷちゅぷ言ってる…」

「やぁ…」

私、オスカー様にしがみつくみたいに首筋に抱きついちゃった。だって、そうすれば顔を見られなくてすむから…

でも、そうしたらオスカー様の指がショーツの脇からそこに…入ってきたの。

「あっ…」

指が…優しくしくそこをまさぐってる…入り口のあたりをするすると軽やかに滑らかに指を滑らせて…ほんとにもうとろとろだわ、私…そのもどかしいような動きに勝手に腰がくねってた…や、もっとちゃんと…

「ほら、自分でもわかるだろう?こんなに濡れて…どうして濡れているかもお嬢ちゃんはわかるよな?」

「あ…私…」

襞襞の合せ目で妖しく指が蠢いている…くすぐるように、ほぐすように、蜜の感触を楽しむように…でも、奥まで入ってこない…あの小さな突起にも触れてこない…私、無意識にオスカー様の指を誘うように腰を持ち上げてる。オスカー様はそれを知ってる、知ってるのに奥まで分け入ってこないの…なぜかって、それは…

「ほら、くちゅくちゅ言ってるのが聞こえるだろう?なんでこんなにびしょびしょなのか、さあ、言ってごらん?お嬢ちゃん…」

もぅ、もぅ、意地悪…なんでこんなに言わせたがるの?私、オスカー様の首根っこにしがみついて、肩に顔をうずめるようにして、擦れた声でささやいた。顔を見つめながらなんて言えないもの…

「おすか…さまを好きだから…大好きだから…」

「………」

オスカー様の指の動きが一瞬止まった…どうして?や…やめないで…私の方はもう止まれないのに。溢れかえるような気持ちをそのまま言葉に迸らせてしまっているのに…

「オスカー様が好き、大好きなの。好きで溜まらない気持ちが我慢できなくて溢れてきちゃうの…だから、止まらないの…後から後から溢れてきちゃうの…恥かしいけど溢れて止まらないの…」

途端に息もできないほど、ぎゅっと抱きすくめられ…私の耳には、私の名を際限なく呼ぶオスカー様の声…

「アンジェ…アンジェ…俺の…俺のアンジェ…」

そして、再び降り出す口付けの雨。顔に、唇に、首に、肩に、乳房に…あらゆる所に押し当てられる熱い唇。口付けながら固く抱きすくめられて息もできない。私、もう、何が何だかわからないまま、オスカー様になされるがまま。

「あぁっ…あんっ…あっ…」

「アンジェ…アンジェリーク、好きだ、好きで愛しくてたまらない。君も同じ程に俺を想ってくれているなら…もし、そうなら…」

オスカー様が熱い吐息混じりに、切羽詰ったような声で私に囁いた。

「ああ…オスカー様、好き、本当に好き…」

ああ、自分で言っててもどかしい。全然足りない。言葉じゃ伝えきれない。どうしていいかわからないほど好きな気持ちは、どうしたら伝えることができるの?

「…お嬢ちゃん、それなら、お嬢ちゃんも俺を好きな気持ちを示してくれるか?この唇で…」

オスカー様が僅かに瞳を細めて、なぜか切なげな、でも、とっても真摯な表情で私の唇をすっと指でなぞった。私、それでどうすればいいかわかったような気がした。

ああ、そうだわ、オスカー様がさっきおっしゃってた…好きな人を見ていたくて、見ていると好きって伝えたくなって、でも、もう、それでも足りないから、触れたい、触れられたいって思うんだわ。私、オスカー様に触れてもらうばかりだから…幸せにしていただくばかりだから…でも、私もオスカー様に、私がオスカー様をどれほど好きか…できる限り伝えたい、わかってもらいたい、私も、すこしでもオスカー様を幸せな気分にしてさしあげられたら…って思うの。

だから、私、自分からオスカー様にぎゅっと抱きついて、その整った顔に一杯キスしたの。秀でた額、筋の通った鼻梁、滑らかな頬、そして、最後に、形のいいセクシーな唇に…

「オスカー様、好き、大好き…私をいつも優しく見つめてくださる瞳も、私に一杯キスしてくださるこの唇も…聞いてるだけで溶けちゃいそうになる甘いのに男らしい声も…」

オスカー様の素敵なところで、声とか瞳とかキスできない所もあるけど…でも、今は唇で伝えたいの、オスカー様のおっしゃる通り、私もオスカー様に触れたいの。

だから、私はオスカー様の逞しい首に唇を当てて、少しずつそれをずらして行った。私がぶら下がってもびくともしないような首も、分厚い肩も、私をしっかり抱きしめてくれる腕も、皆大好き。だから、一杯キスするの。

そしたら、オスカー様は優しく髪を撫でてくださった。でも、もう片方の手は、何気なくすっと股間に差し入れられて…するっと魔法みたいにショーツを取られちゃったの。私、一瞬びっくりしてキスしてた二の腕を軽くかぷって噛んじゃった。でも、鋼鉄みたいな硬い筋肉の束だから、跡もつかないの。なんだか悔しい…

「お嬢ちゃんは、俺の腕が好きなのか?」

オスカー様は落ちついた、でも、なんとなく嬉しそうな口調で話ながら、私の股間に手を差し入れて襞襞の合わせ目をまた、まさぐり始めたの。どうしよう…そっちに気がいってしまいそう…だって、私のあそこ、とろとろのままなんだもの。そのまま指で擦られたりしたら…

「あっ…オスカー様の身体は…どこもみんな好き。逞しくて、男らしくて、頼もしくて…綺麗でやさしいから…強そうなのに優しく抱きしめてくれるこの腕も好き、いつもとても優しく撫でてくださるこの手も…」

私は気をそらすようにオスカー様の腕を取って自分の頬に摺り寄せた。大きくて、固くて、暖かい、厚みのある男らしい手。私はこの手に撫でてもらうのが大好きなの。

「いつも一杯私に触れてくださるこの指も大好き…」

そして、私、さっきオスカー様にされたみたいにオスカー様の指を口に含んでみたの。

オスカー様の指は触れると少しごつごつしてて、私の指よりずっと太いけど、でも、長くて形がいいから、無骨には見えない。すごく器用そうな綺麗な手…男らしいのに繊細さを感じさせる指なの。だから、オスカー様の指に触れられると、羽毛で撫でられてるみたいに思うのかしら…今も、唇を噛んでないとやるせない声をあげてしまいそうになるのは、この繊細な指のせい…

そう思ったら、何故かもっと丹念に舐りたくなって、私、オスカー様の指を吸いながら舌を絡めたりもしてみたの。

「お嬢ちゃん…」

オスカー様の声が少しかすれてる。オスカー様の喉が上下したように見えたのは気のせい?

それから、オスカー様の指を口から離して、私はもう一度オスカー様に抱きついて分厚い胸板にすりすり頬ずりしたの。ほんとはさっきからずっとこうしたかったけど、今まで恥かしくてできなかったから…

「お嬢ちゃんは俺の胸も好きか…?」

オスカー様の口調は穏やか…でも、声は少し擦れたような吐息混じり。その間も、指はそれだけで生きてるみたいに私の股間でざわめいてるから、私の方は落ちつくどころじゃないのに…軽く圧迫するように手を押しあてて、指は入り口を僅かに割ってゆっくり上下してる…煽るだけみたいな愛撫…

「んっ…私がオスカー様の身体に見惚れてしまっていたの、ご存知でしょう?……この厚くて逞しい胸が、ほんとに素敵だと思ったの…引き締まった身体の線が本当に綺麗で見惚れてしまったの…見ていてどきどきしてたの…」

逞しくて鍛えぬかれてて、一分の隙も無駄もない身体、男の人だけが持ってる、鞭のように鋭いちょっと怖いような美しさ…魅入られてしまう。どきどきして目が逸らせない。

だから、私、オスカー様の鎖骨から厚い胸板に一杯キスをした。オスカー様はその間、私の髪と背中と…そして襞の合せ目もずっと撫でてくださってる。その手の動きから気を逸らすように、私はオスカー様の胸に唇を押し当てる。

厚い弾力のある鞣革みたいな胸、その胸にキスしてれば、当たり前のように濃褐色の先端が目に入る。それを意識してしまうと、私の動悸はもっと早くなってしまう。だって、なんだか目を奪われてしまうんだもの。凄く…セクシーって思ってしまうんだもの。

だからここにもキスしたい…

気持ちいいって思ってくださるかしら…オスカー様もこんな気持ちなのかしら…そんなことを思いながらその突起を口に含んでみる。自分がされたことを思い出して、舌を回してちゅっと吸ってもみる。

自分の大胆さにどきどきして、上目遣いでオスカー様を見上げたの。オスカー様、驚いたり呆れたりしてない?

オスカー様は少し眉を顰められて…なんだか切なそうなお顔をなさってた…今は股間の指の動きもゆっくりになってる…

「オスカー様…気持ちいい?」

「…ああ、お嬢ちゃんは上手だな…」

よかった…気持ちいいって言ってもらえると嬉しいし、安心する…もっと、気持ちよくなってもらいたいって思っちゃう…あ、これってオスカー様も同じ?私がはっきり気持ちいいって言った方がオスカー様も嬉しい?

私はオスカー様の胸の突起に見様見真似で舌を回してから腰の方に手を伸ばした。引き締まりに締った腰回りが男っぽい。どうしよう…この腹筋にキスするのはちょっと姿勢が苦しい…それにその下は…あからさまに見ないようにはしてるけど…さっきからあたっているんだもの、すごく固いものが…は、はずかしいけど、でも、オスカー様に喜んでいただきたいから…それに…私の中にも自分からオスカー様に触れたいって気持ちがあるの…オスカー様の身体にキスしてるうちに気付いたの。だからここも…

私、下腹部に手を伸ばして筋肉がうねるようなお臍の周りを撫でてからその部分に手を宛がった…熱い…布越しでも熱い…触れた私の頭もかぁっと熱くなった。

「オスカーさまぁ…」

私、許可を求めるようにオスカー様の顔を見つめながら、中途半端に開いてたファスナーを降ろして…手を滑りこませて全体をそっと握って…その熱さと固さに改めてどきどきしながら撫でるように指を絡ませてみた。

オスカー様は眩しいものでも見るように黙って私を見てる…

指で輪郭を確かめながら、私は少し腰をずらして、オスカー様の指から1度逃れた。嫌なんじゃないの、でも、このままじゃキスできないから…そのままストンと床に降りて、オスカー様の膝の間に自分の身体を割り込ませて。

「オスカー様…好きなの…オスカー様の何もかもが好きなの…」

指で艶やかな布の感触を確かめながら目を瞑ってそれを取り去って…だって、まじまじとなんて見られない…含んでみたことがない訳じゃないけどいつも暗いところでだったんだもの…触れるか触れないかの距離で掌で包むように位置を確かめてから先端にそっと唇で触れたの…少しづつ唇を滑らせてちゅっと吸うような小さなキスを全体にしてみたの。滑らかな先端から合せ目に沿って、張り出した部分は唇で擦るように触れて、節くれだつような逞しく固い幹の部分…ここが一番熱い…に唇を移して…目を閉じていても唇の感触でどんな部分に口付けてるかわかるの…

「お嬢ちゃん…」

オスカー様が私の頭をそっと撫でてる。私、その掌の感触に促されたように舌を差し出して輪郭をなぞりはじめた。舌でなぞると、どくどく脈打ってるみたいに感じる。全体をすぐには舐めきれないから、何度も私の舌は往復する。

オスカー様に私がオスカー様を好きな気持ちは伝わっているかしら…拙いと思うけど、オスカー様が私を気持ちよくしてくださるみたいにはできないと思うけど、でも、少しでもいい、できるだけでいいから、伝えたい、伝わって欲しい…

「お嬢ちゃん…一生懸命愛してくれてるんだな…お嬢ちゃんの真摯な想いが唇から伝わってくるみたいだ…」

…嬉しい…オスカー様に少しは気持ちが伝わった?

でも、次の瞬間、すぐにこう思ったの。一生懸命だけしかないんじゃいや、私もオスカー様に気持ちよくなっていただきたいのに…そう思うのは欲張り?身のほど知らず?

私も胸の先をいろいろしてもらったら気持ちいいから…されることによって感じ方は違うけど、皆気持ちいいから、それも思い出して、上から全体を…といっても全部は入らないのだけど…口に含んで舌を回してみた。先端を軽く吸ってもみる。軽く噛むのは…しない。オスカー様みたいに上手く力の加減ができないとオスカー様が痛いかもしれないから…

「咥えたまま、唇をすぼめるようにして…上下してごらん?」

「んんっ…」

言われたままに私、全体を唇で擦るように顔を上下させた。

「上手いな、お嬢ちゃん…そう雁首を擦るように…」

カリクビ?かりくびって何?…あ…ここのこと?…ここ、擦ると気持ちいいの?私も先端は特に気持ちいいからオスカー様も同じなのかしら?なんて思ったら、顔が熱くなっちゃった…

でも、オスカー様に気持ちいいって思っていただきたいから…私、その…出っ張った所を意識して擦るようにしながら舌を絡めたり回したり先端を吸ったり…でも、幹の部分全部は入りきらないから少しづつ…いろいろしてみながら…私もつい聞いてしまったの。

「オスカー様、あの…気持ちいい?」

「ああ、上手だ、お嬢ちゃん…お嬢ちゃんの柔らかい暖かい舌に包まれると溶けちまいそうに気持ちいい…」

や…嬉しい…どうしよう、すごく嬉しい…オスカー様が私に「気持ちいいか?」ってお尋ねになる気持ちがわかっちゃう…

私は嬉しくなって、もう一度オスカーさまのものを口に含みなおしたらオスカー様が私の背に手を当てて抱き寄せながらこうおっしゃった。

「お嬢ちゃん、もう少し俺の方に身体を寄せて、もっと俺の側に……」

そして、私の背中やお尻をさわさわって優しく撫で始めたの。オスカー様の大きな掌、温かくて安心できて…好き。

「俺もお嬢ちゃんの気持ちに報いたい…もう少し膝を伸ばして…」

私、言われるままに少し屈み気味だった膝を伸ばした。

オスカー様の手は円を描く様にお尻を撫でてる。うずうずこそばゆいような感じ。

「かわいいお尻だな、丸くて真っ白で張りがあって…いくらでも撫でてやりたくなる…」

「んんっ…」

オスカー様はほんとに衒いなく私の身体をかわいいって言ってくださるから、照れちゃう…でも、嬉しい…

「お嬢ちゃんが俺を好きだって気持ちはこの唇からじんじん伝わってくる…お嬢ちゃんが俺を好きだという気持ちは…今も溢れてるか?」

「?」

その時私のお尻を撫でてた掌は少しづつ中心にむかってずれていて…お尻の方からオスカー様の手がいきなり、私のそこを撫で摩ったの。

「んんぅっ…」

後ろからオスカー様の指が合せ目を割ってる…あの長くて綺麗な指が…粘り気のある水音を立てて私の肉の芽を探って…探し当てられて…オスカー様の指が触れてる…指の腹があたる…その繊細な指先が私の肉の芽をころころと転がしはじめた…

「あああっ…」

鋭い快感が私の身体を貫くように走った。思わず、口を離してしまってあがる高い声。知らない内にむしゃぶりつくようにオスカー様の太腿にしがみつく私の腕。

「ああ…やっぱりさっきよりもっと溢れてるぜ、お嬢ちゃん…俺を好きという気持ちが滾々と溢れてる…」

「ああっ…あんっ…」

指先に私の蜜を掬って乗せて、肉の芽を蜜で包むように指先で回されて軽く摘まれて…返事なんてできるわけない…

「ほら、もっと溢れてきた…留まる所を知らぬ豊かさだな…」

ああ…恥かしい…でも、でも、自分ではどうしようもないの。オスカー様の指に羽で撫でるように触れられて、指が少しでも動く度に電気が走るみたいで…あの綺麗な指先にずっと弄られているのかと思うと、それだけで身体の中から何かが溢れてくるみたいで。

「俺を好きと思う気持ちが溢れて止まらないのなら…俺は、その全てを受けとめてやりたい…いや、俺が…俺の方がお嬢ちゃんのその気持ちを全部とりこんでしまいたい…飲み尽くしてしまいたいほどだ…」

「?」

私、オスカー様が何をいってるのか、よくわからない。わかるのは、オスカー様の指から紡ぎ出される痺れるような鋭い快感だけ。もう、自分からオスカー様をいとおしむ余裕なんて微塵もない。息を詰めてその快感に流されないようにしてるだけでやっと…

次の瞬間、私の身体がふわっと浮かんだ。オスカー様に軽々と抱き上げられて気付いたらソファの上にちょんと座らされてた。そしてオスカー様ご自身が入れ替わるように私の前にひざまづいた。一瞬のことで私、何がなんだかわからなかった。でも、オスカー様の肌が少しでも離れるのが無償に寂しくて、オスカー様にむかって無意識に手を広げて差出してた。

抱っこをせがむ子供のように伸ばした腕を取られて宥めるようなキスをされ…それから腕を自分の膝に置かされた。そして、オスカー様は今度は私の足を取って恭しい仕草で足の甲にキスしてくれて…

「お嬢ちゃん…この雌鹿のような足や脹脛や、太腿や、丸いかわいいお尻も…全部キスして舐めつくしてから…ってつもりだったが、俺の方がもう我慢できなくなっちまった…お嬢ちゃんの想いの丈を飲み干しちまいたい…」

オスカー様は私の足を持ったまま、それをぐっと持ち上げるように押し開いて…そのまま私の中心にいきなり顔を埋めてきたの。私の前にひざまづいたまま…舌を差し出して合せ目を…さっきから太腿まで滴ってしまうほど蜜の溢れてる襞の合せ目を丹念に舐め始めたの。

「あああっ…やっ…」

ぬめっとした熱い舌が私をこじ開ける。尖らせた舌先が幾度も襞を割って上下する。狂おしいほどの快感が身体中を駆け抜ける。恥かしくて死にそう…でも、もっと舐めてほしいような…止めないほしいような…だけど恥かしい、もう、どうしたらいいのかわからない…。だって、明るい部屋のソファの上で大きく足を開かされて…全部つぶさに見られてる…見られながら溢れかえってる蜜を舐め取られてる…私、恥かしくて頭が変になりそう…でも、身中からもっとじわ…と溢れてくるものがある、それが自分でもわかる…

「や…おすかーさま…はずか…しっ…そんな…見ないで…」

ぐっと襞を更に大きく押し開かされる感触。

「どうしてだ?こんなに綺麗なのに…こんなに綺麗で艶やかなのに…俺は君の花に見惚れてもう目が離せない。この鮮やかな濃い薔薇色の花弁に…花弁を縁取る金色に輝く繊毛に…芳香を放つ甘い蜜に…もう捕われの虜だ…」

言うや奥まで舌を差し入れられて、舌で襞をこそげるように探られて…私の背中、ソファの上で大きく弓なりにしなった。でも、足は縫いとめられたように大きく開かれたまま…

「それに、この溢れる蜜が俺を好きな気持ちの現われなら…俺が全て受けとめなくてどうする?いや、俺が受けとめたいんだ…お嬢ちゃんの思いを、お嬢ちゃんはこんなに俺を好きだと思ってくれているのかと…感じとりたいんだ、俺自身が…」

そういうとオスカー様は、私の襞を形のいい鼻先で押し広げて…尖らせた舌先で剥き出しにした小さな珠をつついてはじいたの…さっきまで莢の上から指先で転がしてた、いつもは隠れてるあの珠を…

「きゃぅっ…」

さっきよりもっと鋭い痺れるような感覚が全身を貫いた。感電したみたいに意識がスパークする。

「ここも…こんなに固くしこって…ルビーみたいに輝いて…綺麗だ、お嬢ちゃん…」

オスカー様はそこを丹念に舐め続ける。小刻みに動く舌。舌先で珠を円かに転がす。時折りリズミカルに弾く。唇を押し宛てて吸われる。その唇で軽く鋏まれつままれては、離される。

私、もう、身体が溶けてしまったみたい。痺れてしまって動けない。閉じた瞼の裏は幾重にも重なり弾ける火花。ただ、オスカー様に与えられる快感に声をあげることしかできない。それくらい、オスカー様が導き出す快感は圧倒的で。

「あっ…はぁっ…やっ…だめ…もう…ああっ…」

「だめだ…まだまだ溢れてくる…全然追い付かない…」

「やっ…もう…もう、だめなの…オスカーさま…オスカーさまぁっ!」

自分でも何をだめなのか全然わからない。わかるのは、このまま舐められてたら、気が変になりそうだってこと。今、欲しいのは…もう、鋭い愛撫じゃない…

「もう少し…これで我慢できるか?お嬢ちゃん…」

言葉とともにつぷり…とさし入れられた指先…ゆっくりと私の襞を分け入って…長い指が奥の方を掻き回してる…私の中で指を曲げ伸ばしして肉壁を擦ってその感触を確かめてる…

「あぁっ…」

「かきまぜたらお嬢ちゃんの蜜がもっと溢れてきちまったな…」

指で私の襞を掻き回しながら、でも、オスカー様の舌は休まない。剥き出しにした珠に唇を押しあててちゅっと吸って、舌全体を押し当てるようにじっくりとなめまわされて、かと思うとつんつんと舌先で突つかれて弾くように転がされて。その間も長い指は不規則に私の一番深いところを突く。

「あああっ…やぁっ…はぁっ…は…も…許して…溶けちゃう…」

気持ちいいけど、気持ちよすぎてもう苦しい、こんなに気持ちよくしてもらってるのに、気持ちよくなればなるほど何か足りないって思いも強くなって苦しいの。足りない物を埋めてほしい、充たしてほしい、もう、本当に気が変になってしまう…

「オスカー様…もう、もう…ほんとにだめ…お願い…オスカーさまぁっ…」

「……俺が欲しいか?」

私、よく意味もわからぬまま夢中で頷いてた…だって、私はいつも、いつでも私はオスカー様が欲しいんだもの…でも、オスカー様はそれをご存知ないの?だったら、ちゃんと伝えなくちゃ。伝わらない気持ちはないのと同じだから…私がどんなにオスカー様を求めてるか、どれほどオスカーを欲しているか…知ってほしい、わかってほしい。

「オスカーさま…好きなの…どうしていいかわからないくらい好きなの…いつも、いつでも、オスカー様がほしいの…オスカー様がいれば他に何にもいらない…」

私、無意識のうちにオスカー様に手を伸ばしてた。オスカー様を抱きしめたくて。オスカー様の全てを抱きしめたくて。

でも、逆にその手をぐっと引っ張られて、ぼすんと勢い良くオスカー様の胸に飛び込むように抱き寄せられて…

「俺もだ、アンジェリーク、片時も離したくない、離せない、だから…俺はっ!」

大きな身体がのしかかるように覆い被さってきて、視界全部が褐色の肌で占められて、同時に私の中心をものすごく固くて熱いものが一気に一番奥まで貫いた…

「ああああっ!」

一瞬気が遠くなった、深く激しい衝撃に。でも、それは苦痛だからじゃなくて、むしろ、あまりに深くて重い快感に意識が追い付けなかったから…

だって、私、無我夢中でオスカー様にしがみついてた。広い背中にあてどなく手をさ迷わせ、自分から足をからめるように、腰をおしつけるようにしてた。苦しかったらそんなことするわけない…

そんな私の身体をオスカー様はぐっと力強く抱き寄せてくださって、もう片方の手でお尻をしっかり抱え込んで身体をなるべく密着させてくれて…そして、私の胎内を抉るように鋭く腰を打ちこみ始めた。

最初の衝撃の残響にふわふわしてた意識は、その力強い快楽にあっというまに捕われて…もう、その快楽を追いかけることしか、私は考えられない。

「あっ…ああっ…あっ…はっ…」

オスカー様の物が奥にあたるたびに上げてしまう声。私を苦しいほどに充たす灼熱の剛直。鋭くねじ込まれては退ける。退けるたびにすぐさま来てほしくて私は一層きつくオスカー様の背にしがみつく。突かれれる度に快楽が重なって積もって、なのに、突かれれば突かれるほど、もっと、もっとと、心は貪欲に叫んでいる。この熱さに、この力強さに翻弄されることが、悦び。何にも替え難い、何よりも貴重な、この上ない悦び。

「アンジェ…アンジェ…」

「ああっ…あっ…オスカー様ぁっ!」

オスカー様の身体、熱くてどっしり重い。この固い感触と重みがたまらなく心地良い、この世で感じる最高の幸せ…だから、一生懸命に抱きつくの。オスカー様に抱きすくめられて、ひとつに結ばれて、言葉にできないほどの快楽に酔わされて…あんまり幸せで幸せすぎて、それをどう表したらいいか、わからない、どう伝えたらいいか、わからない。できるのはオスカー様の身体を思いきり抱き返すことだけ。

「オスカーさまっ…好き、好きなの…もっと、もっと…」

「気持ちいいか?こうしてもらうのは好きか?」

「んんっ…オスカー様が好きだから…だから、一杯抱いて、思いきり抱きしめて!」

「ああ、それこそが俺の望みだ、アンジェリーク!」

一層ぐっと腰をひき付けられて、オスカー様のものがねじ込むように打ち据えられて、一番奥深い部分を何度も何度も思いきり突き上げられて抉るように擦られて…身体中オスカー様で一杯になって…もう、何も考えられない…もう、だめ…

「ぁああああっ…」

私、夢中でオスカー様の背中に爪をたててた。もしかしたら、肩を噛んでたかもしれない…

その一瞬は時間が引き伸ばされたようで。とろりとした快楽が暖かく私の身体を包んでいるようで。

「…もうイッちまったか?辛抱の足りないお嬢ちゃんだ…」

オスカー様に髪をかきあげられて、頭を抱え込むようにキスされて、朦朧とした瞳でオスカー様を見上げても、抗弁もできない。それどころか、少し乱れた前髪が少年ぽくてかわいい…なんてまたぽーっとしたままオスカー様に見惚れてた…

「だが、俺はまだまだお嬢ちゃんを愛し足りない…そうだな…お嬢ちゃん、そのまましっかり俺につかまっていろよ?爪をたててもいいからな?」

オスカー様はにやっと笑うと私のお尻をぐっと抱え込むように抱いて…そのまま立ちあがった。

「きゃあっ…ああぁっ」

いきなり身体中突きぬかれたみたいな衝撃に息が止まるかと思った。

「ソファの上だとどうしても姿勢が限定されるからな、このままベッドに行こうな?お嬢ちゃん…」

しれっとそんなことを言って、オスカー様はすたすた歩き出されて。

「あっ、あっ…あっ…あぁっ…」

でも、私はオスカー様が一つ歩みを進めるたびに、どうしようもなく甲高い声があがってしまって。

「そんなに必死にしがみつかなくても大丈夫だぜ?お嬢ちゃんは羽みたいに軽いからな。」

それでも、私必死でオスカー様にしがみついてた。もう、ほんとに必死だった。落ちないようにじゃないの。私がぶらさがってもオスカー様はびくともしないし、オスカー様は私のことをしっかり抱いていてくださってたし…でも、私から抱きついてすこしでもかかる重みを減らさないと…少しでも奥にあたる加減を減らさないと…私、気を失いそうだったんだもの…

「やっ…違うのっ…ああっ…もっとそっと…」

静かに歩いて…って言ったつもりだったのに、オスカー様ったら、ひどい勘違いをなさったの。

「もっと?なんだ、ただ歩くだけじゃ物足りないのか?じゃ、すこし刺激を与えてやろうな?」

なんて言って歩きながらいきなり私を大きく上下に揺さぶったの。

「やぁああっ…あ…あ…」

もう、私、声もでなくて…ソファからベッドなんてほんの少しの距離しかないはずなのに、いつベッドについたのかもよくわかってなかった…だって、その姿勢のまま…繋がった形は変えないまま、私、ずっと突き上げられて…時たま胸の先端も吸われて…私はオスカー様の首にしがみついているので精一杯で…頭のなかはとうに真っ白になってしまっていたんだもの…

 

ベッドに腰掛けた俺の膝の上で君がリズミカルに弾んでる。

俺の動きに合わせて、俺の示す愛の旋律に乗って踊るように。

君の表情は一見苦しげだ。時折どうしようもなく頭を振る。大きく背をしならせる。かと思うと力を失ったようにくたんと俺にその身を預けて抱き縋る。

だが、その苦しげな表情の裏にこの上ない悦楽が垣間見える、快楽を懸命に追おうとする姿が愛しくて仕方ない。忙しい喘ぎも、顰めた眉も、乱れた髪も、なにもかも可憐で愛らしく、美しい事この上ない。

お嬢ちゃん、気持ちいいか?

愛し合う悦びを、ひとつに結ばれる幸せを、その身体一杯に感じてくれているか?俺は感じさせてやれているか?

俺を欲しいと言ってくれた君に、俺は存分に応えてやれているか?

飾り気も混じり気もないどこまでも純粋な愛を示されて、真正面から真っ直ぐに俺を欲しいと思う気持ちを示してもらって、それが涙が出るほど嬉しくて、幸せで。限りなく澄んだ綺麗な愛情に自分自身が洗われるようで。

その愛に俺も応えたい。俺も君をいつでも欲っしていることを伝えたい。

どんなに君を愛しく思っているか、大切にしたいか、君を幸せにしてやりたいか…それを俺はこの身を使って示す。この身をもって証をたてる。

触れて、抱きしめて、口付けて、君の内に入って、君に受け入れてもらって、ひとつに結ばれて溶け合って…その限りない悦びを通して俺は愛を伝えたい。俺は男だから、男のやり方で君を愛す。他のやり方を俺は知らない。

考えうる限りの快楽に酔いしれてもらうしか、それを懸命に与えることでしか、君を愛し、何よりも求め、大切にしたい気持ちを現す術を俺は知らない。

人として産まれて感じうる最高の悦びを、せめてこの身で与えたいと願ってやまない。

だから、俺は求道者のごとく君をむさぼる。君の華奢な身体を思いきり抱きしめ、豊穣の極みの乳房を飽く事なく味わいながら、自分の楔で惨いほどに突き上げる。

君が俺の与える快楽に浸り、酔いしれるその様こそが俺への褒賞、何にも替え難い喜び。

君はもう、自分で自分の身体を支えていられないみたいだな。俺にすがるように抱きついているだけで精一杯か?

だから、俺は抱き合ったまま、向きを変えて君をシーツの上に横たえ、自分は君の上に覆い被さった。

この方が君の身体は楽だろう?自分を支えることに気を回さなくていいから、もっと愛戯に集中できるだろう?

俺は君に口付けながら、激しく腰をせり出す。君の腰が退けてしまわないように固く抱きすくめたまま。

俺に塞がれた君の唇から、切ないやるせない吐息が堪え切れずに漏れ出す。挙句苦しそうに唇を振り解く。でも、身体は俺の律動から逃げてない。懸命についてこようとしてくれる。むしろ積極的に応えてくれている。

俺のような体力はないから、すぐにギブアップしてしまいそうな君なのに。実際、もう、自分を支えていられない君なのに。それでも、一緒に快楽を追おうとしてくれる。俺に応えようとしてくれる。そんな君がかわいくて仕方ない、愛しさが際限なく込み上げてきて、自分でもどうしていいかわからない。

だから、俺の動きは激しくなる一方だ。強く深く激しく、渾身の力で君を貫き、突き上げ、掻き回す。端から見れば、愛しむというより苛んでいるかのようだろう。君は俺に貪り食らい尽くされているかのようだろう。

でも、君は怯まない。俺の燃え盛る熱情を真正面から悉く受け入れてくれる。限りない柔らかさと奥深さで。そして嫋嫋たるすすり泣きを返してくれる。息も絶え絶えな様子でしなやかにその白い裸身をくねらせる。そのなやよかに儚げな風情が更に俺を煽るのを、君は知っているのか?

その様に俺の呼気も荒くなる。何かを追うような追われるような、切羽詰った感覚。

俺の背筋に引き絞りに絞っていた快楽がもう、堪え切れずに悲鳴をあげている。

俺は思いきったように君の足を大きく抱え込んで、体重を掛けた深く重い律動を続けざまに放った。君を壊してしまいそうな勢いで、思いきり深深と刺し貫き続けた。

君の短く忙しない呼気に、俺の荒い呼気が被さる。二人で重なり合い連なりあいながら、白熱した一点を目指し疾走する幻視。

君の身体がふるふるっと細かく震えた。俺を優しく包みこむ柔襞が一転して俺のものをきつく絞り締め上げる。その打ち震える収縮に促され俺の堰き止められていた思いは雪崩を打って君の内に迸った。

凝縮したこの一瞬。君と溶け合うこの至福。

愛しさを堪え切れずに君をみやれば、君も俺の腕の内で安らぎ充足しこの上なく穏やかで清らかな笑みを唇に乗せている。そんな君を見て、見ることができて俺の身中は限りない悦びと安堵と安らぎに充たされる。

柔襞は今は打ち寄せる波のように穏やかなうねりを繰り返している。その妙なる優しさが俺の激情を受けとめ、俺の激しさと君の優しさはひとつに溶けて交じり合い、愛し合う悦びと安らぎへと美しく結晶化したかのようだ。

俺は感謝の思いを込めて君に口付ける。何度愛しあっても、この幸福と感謝の気持ちは変わらない。俺は君と愛し合うごとに新たな命を持って産まれかわるような気さえする。

俺は一人君に出会うために、君と供に生をわかちあっていくために、今まで生きてここにいたのだと、心から思うんだ。

アンジェリーク。俺の…俺のアンジェリーク。

 

俺は執事に食事を部屋まで運んでくれるよう頼んだ。どうみても君は階下の食堂に行ける様には見えなかったから。

「う…ん…オスカーさま…どうなさったの?」

ベッドに突っ伏していた君が物憂げに顔をあげて俺のほうを見やった。まだ、意識が朦朧としているようだな。とろりと蜜をまぶしたような口調も仕草もいかにも駘蕩に浸っていたという雰囲気でぞくぞくするほど淫らだ。激しい情事の後だけに見せる君自身は知らないであろう君の一面。

君は俺を誘っているつもりはないとわかっている。だが、君の存在自体が俺には媚薬のようだ。きりがないとわかっていても、また溺れそうになる。溺れたくなる。

まったく君は罪な存在だな、お嬢ちゃん…知らず知らずのうちに俺を誘惑してる…なのに、誘惑されることで俺の魂はなにかに充たされ癒されているような気がするのは何故だろう。

「今、食事を運んでもらうよう頼んだ。その方がお嬢ちゃんも楽だろう?」

「あ…ありがとう。でも、料理長さんに申し訳ない…」

「気にすることはない。料理を無駄にする訳ではないんだから…」

出来立てを食ってほしいというシェフの愚痴は聞いているが、それは俺のところで遮る。君が気に病んだらかわいそうだからな。

君が上掛けで胸を抑えてゆっくりと上体を起こした。俺はその横に腰掛け、君の額に軽く口付ける。

「済まなかったな。食事もさせないで…腹が減っただろう?」

「や…そんなことないです…私だって…食事よりオスカー様のことが…オスカー様のことで胸が一杯だったから…」

そう言うと君は照れた様に俺の胸に顔を埋めてしまった。

「お嬢ちゃん…」

まったく君には敵わない。これで誘惑してる気がないのだから…俺は時折自分の忍耐力の上限を試されているような気がしてならない。尤も、俺は、今、自分の忍耐力をまったく信用してないがな。俺は君を知ってからすっかり辛抱というものを失ってしまったみたいだ。辛抱が足りないのは…実は俺自身の方なんだ。

「まったく君は…罪な存在だぜ、お嬢ちゃん…」

君は俺を見上げて小鳩のように小首を傾げている。

「とりあえず食事が来る前になにか羽織っておこうな…そのままの姿じゃいくらなんでも使用人に目の毒だからな…」

「や…ん…」

ぽっと頬を染めている君に俺は、手近にあった俺のシャツを着せてボタンをとめてやる。君はおとなしく…いや、嬉しそうに俺のシャツを着せてもらって微笑んでいる。

さあ、食事をしながら、今日は何を話そうか。

一緒にいなかったとき、何をしていたか、何を思ったか。いろいろ語りあって、笑いあって、もっと心を近づけよう。

順序が逆かもしれないが、あのままでいたら、俺はかえって君の話を聞いたり、自分から話すゆとりももてなかったような気がする。君が欲しくてどうにかなりそうだったから。君も同じだと言ってくれると嬉しいが…

俺は君を愛しく思う気持ちをこの瞳で語り、この唇で証をたてる。

君もまた、俺を欲する気持ちを瞳で語り、唇で証をたててくれた。

だから、今はもっと穏やかな思いを言葉にして、お互いに伝え合い確かめあおう。

君の思うこと、感じたこと、俺は全て知りたいと思うから。

そして、こんな充たされた日々を重ねて行けることに、こんな幸せな時を俺に教えてくれた君に、俺は感謝の思いをこめてもう一度口付けた。

控え目なノックの音が聞こえたが…君が気付いていないことをいいことに俺は聞こえない振りをした。

流石に執事が怒るかもしれんな、君に食事をさせないつもりかと…そんなつもりは毛頭ないが、俺は君との口付けを途中で止めることなんで絶対にできないし、したくない。

誰が運んで来たかはしらんが、諦めてワゴンを置いていってくれることを願って、俺は君の唇を堪能し続けた。

辛抱が足りないことなら誰にも負けない自信があるが、君にひもじい思いをさせる訳にはいかないという理性を信じて賭ける事にした俺だった。


      
・◆ FIN ◆・



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